野球撮影、実写をまじえて解説する10のポイント
こんにちは、
拙作ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、写真の撮り方です。
1)対象:野球
2)目的:試合を記録として残す。
記録ですので、
どちらのチームにもかたよりません。
中立な立場で撮影します。
その中立な立場にたって、
野球を記録写真として残す上で、
何が大事で、何に注意すべきかを、
解説します。
題して、
野球撮影、
実写をまじえて解説する10のポイント
◆普通の野球写真にも応用可能
今回「記録写真」が中心ですが、
紹介する中身の大半は、
普通の野球写真にも適用できます。
是非応用してもらえればと思っています。
ちなみに、
私は約20年間、
高校野球の写真を撮ってきました。
そこで得たノウハウなどをご紹介したいと思います。
◆記録写真は失敗は許されない。
野球の写真に限らず、
記録写真は失敗は許されません。
被写体は二度と写すことが出来ないからです。
取り損ねることはもちろん、
ピンぼけやブレなども許されません。
だから、
「用意周到」で臨まなければなりません。
「準備」するのは機材だけではありません。
何をどのように写すかの
「計画」
も大事です。
この機材(ハード)と計画(ソフト)の両面が相まって、
初めて良い記録写真が撮れるのです。
ではさっそく見ていきましょう。
- 1.撮影上の注意点
- 2.実写のバックデータ
- 3.野球写真を撮影する10のポイント
- 4.試合前の雰囲気を残す
- 5.スターティングメンバーを撮る
- 6.選手集合を撮る
- 7.ピッチングシーンを撮る
- 8.得点シーンを撮る(喜ぶ応援席も)
- 9.ピンチのシーンも残す
- 10.試合終了のシーンも撮る
- 11.校歌斉唱のシーンも撮る
- 12.勝者、敗者両方の表情も
- 13.最後の観客席も
- 14.まとめ
- 【関連記事】
- ※更新履歴※
- ※CMリンク※
1.撮影上の注意点
まず中身に入る前に、
撮影全体について注意点を紹介しておきます。
1-1.飛んでくるボールに注意を
球場ですので、
いつどこからボールが飛んでくるかは分かりません。
しかも、
そのボールは硬球といって、
石のように硬いものです。
当たったら、痛いどころではありません。
ケガをします。
大事な機材を破損させることもあります。
だから、
球場内にいるときは、
絶対にボールから目を離さないでください。
1-2.他の観客の邪魔をしない
これも鉄則です。
球場はあなた一人のものではありません。
写真を撮っるからといって、
特別扱いはできません。
ほかの観客の邪魔をしないようにしましょう。
通路にすわったり、
立ったままの撮影は厳禁です。
あくまでも、
一人の観客として振る舞ってください。
1-3.できるだけ動き回る
撮影にあたっては、
固定位置ではいい写真は撮れません。
できれば、
太陽の位置も頭に入れておきたいのですが、
こればっかりは、どうしようもありません。
基本的には、
バックスクリーン側が「南向き」です。
だから、
どこの球場でも、このシチュエーションは変わりません。
あとは、撮影する時間帯だけです。
時間帯によって、
微妙に太陽の位置が変わるからです。
それよりも、
ベンチや応援席、右バッター、左バッターなどで、
撮影位置を決めたいものです。
一塁側から三塁側までの移動には、
最低でも2~3分はかかります。
よって、
移動はチェンジ(イニングの交代)時
となります。
トイレは、
5回が終わった、
グラウンド整備時となります。
2.実写のバックデータ
1)試合:夏の千葉大会、決勝
2)年月日:2009年7月26日
3)場所:千葉マリンスタジアム
4)対戦:八千代東vs拓大紅陵
5)機材:Canon EOS 40D、
Canon 100-400mmズームレンズ、一脚
※Canon EOS 40Dについては下記記事をご参照ください。
Canon EOS 40D、現役として今でも十分通用するデジタル一眼の名機 - 知って得・あなたの生活をもっと豊かに!
3.野球写真を撮影する10のポイント
ここで解説する撮影のポイントは下記10項目です。
1)試合前の雰囲気を残す。
2)スターティングメンバーを撮る。
3)選手集合を撮る。
4)ピッチングシーンを撮る。
5)得点シーンを撮る。(喜ぶ応援席も)
6)ピンチのシーンも残す。
7)試合終了のシーンも撮る。
8)校歌斉唱のシーンを撮る。
9)勝者、敗者両方の表情も。
10)最後の観客席も。
4.試合前の雰囲気を残す
まず大事で忘れがちなのが、
試合前の雰囲気です。
忘れがちな理由は下記です。
①本人も緊張している。
当然ですが、グラウンドの選手同様、
撮影する側も緊張する場面です。
②気持ちに余裕がない。
そうなんですね、
いろいろな意味で、
撮影者に余裕がない状況ですね。
余裕がないと、
試合前の雰囲気は撮れません。
4-1.大事なのは事前の準備
私がいつもやっていることです。
球場入りの前に撮影ストーリーを立てる。
つまり、
何をどのように撮るかを整理しておくのです。
ドキュメンタリー作家と同じです。
逆にいうと、
このストーリーができていると、
もう撮影の半分は終わったようなものです。
試合の前に結果が見えているのです。
ここが大事です。
4-2.実写例
上の写真は試合前の写真です。
雰囲気が伝わってきますよね。
5.スターティングメンバーを撮る
次に撮るのは、スターティングメンバーです。
5-1.撮るタイミング
試合開始前。
スターティングメンバーが掲示された直後がベストです。
試合が始まると、
いろんな意味で余裕がなくなります。
また、
途中で選手交代となることがあります。
5-2.実写例
この写真は簡単ですね。
相手は動きませんから。
絞りは、できるだけ絞り込んでください。
シャッター速度を遅くして、
被写界深度を「かせぐ」のです。
焦点範囲を広くするのですね。
6.選手集合を撮る
このシーンは1回切りですので、
用意周到で臨みましょう。
2~3分前からスタンバイしておきます。
シャッター速度は1/250もあれば十分でしょう。
ここも、絞り優先でいきます。
6-1.実写例
上は選手集合の実写例です。
【注意点】
①全員の選手を入れる。
②撮影角度はできるだけ上からにする。
ちなみに上の写真は、
撮影角度では失敗です。
本来ならもう少し上からすべきですが、
この日は観客が満員のため身動き出来ず、
次の場面(試合開始)に備えて、
グラウンド近く(フェンス付近)でスタンバイしていました。
7.ピッチングシーンを撮る
次に絶対必要なのがピッチングシーンです。
このピッチングシーンはチャンスが沢山あるので、
あせることはありません。
といううちに、
ピッチャー交代ともなりかねませんので、
早めに撮っておきましょう。
7-1.バックアップとしてイニング最初の投球練習を
これはあくまでもバックアップです。
イニング開始時の投球練習を撮っておきましょう。
試合が始まると、どうしても打者に神経がいきます。
だから、投球練習しか撮れないことがあります。
7-2.実写例
写真はオーソドックスなピッチングシーンです。
私としてはあまり好きな写真ではありません。
今ひとつ力強さがないからです。
参考までに、写真のピッチャーは、
拓大紅陵の加藤 貴之くんです。
現、日本ハム所属です。
7-3.ピッチングシーン撮影時の注意点
ピッチングシーンで大事なのは、
そのピッチャーの特徴をとらえることです。
顔の表情、ボールを投げる前のフォーム、
ボールを投げたあとのフォーム。
このなかで、
そのピッチャーの一番よいところを
切り取るのです。
そのためにも、
投球練習中によく観察しておきましょう。
8.得点シーンを撮る(喜ぶ応援席も)
次に得点シーンです。
得点シーンはもっとも注目を浴びるシーンです。
よって、
取りこぼしがないように注意したいところです。
しかも、
全得点シーンを撮っておく必要があります。
8-1.一番困るのはホームラン
そこで、一番困るのはホームランです。
しかも、ソロホームランです。
走者が出ていると、
しかも得点域(二塁とか)だと、
得点が入ると予想できますので、
者に注目します。
ところが「走者なし」だと、
つい神経が散漫になります。
しかも打ちそうにない(失礼)、
下位打者だと、
カメラを向けないときがあります。
カメラマンも小休止ですね。
そんなときに一発が出るとさあ大変。
ホームランシーンがないわけです。
仕方がないので、
ホームランバッターがベースを回るシーンと、
ホームイン、ベンチに迎えられるシーンを撮ります。
いずれにしても、ホームランを逃すのは、
悔しくて、悔いの残る一発となります。
これ弁解ではありませんが、
このような取りこぼしは、
プロでもよくあります。
8-2.実写例
8-3.応援風景を忘れないように
ここで忘れがちなのが応援席の写真です。
(上記3枚目)
喜びに沸く応援席の写真があるのとないのとでは、
訴求力が全然違います。
しかも一瞬ですので、取り逃ししやすい。
是非、得点シーンのセットとして応援席を。
このセットは体に覚え込ませておきましょう。
得点シーンの3点セット:
バッター、走者、応援席
9.ピンチのシーンも残す
またピンチのシーンも重要です。
得点に結びつかなくても、
試合の流れに大きな影響をします。
9-1.実写例
これがあると、試合の流れが分かりますよね。
より臨場感がでます。
10.試合終了のシーンも撮る
ゲームセットの瞬間は劇的なシーンです。
逃さないようにしましょう。
ここでもっとも劇的なのが、
最後のバッターが内野ゴロを打って、
一塁へヘッドスライディングするシーンです。
このへんも先を読んで、
準備しておきましょう。
(というと、最後のバッターには悪いですよね)
10-1.実写例
ボードのアウトカウントが、
2アウトになっているのが確認できますよね。
上記2枚目の写真は、
もう少し引いて撮影すべきでした。
そうすると、
勝ったチームの選手が写って、
両者を対比することができました。
その意図はあったのですが、
座り込んだ選手にどうしても気持ちがいってしまいました。
写真歴10年以上でも、
最後のシーンは冷静になれません。
11.校歌斉唱のシーンも撮る
最後の校歌斉唱シーンは簡単です。
校歌を歌う時間が長いからです。
ここでは絞りはできるだけ絞り込んでください。
(被写界深度をかせぐためです)
11-1.左右どちらから撮るか?
この校歌のシーンを左右(一塁側、三塁側)のどちらから撮るかですが、
勝者側から撮るのが鉄則です。
つまり、
勝者が三塁側ベンチであれば、
カメラは三塁側です。
そうすると校歌の後に、
選手たちが応援席に走ってくるシーンが、
真っ正面から撮れるからです。
また校歌を歌っている間の、
負けたチームの表情も撮れます。
校歌斉唱シーンは、
勝ったチームのベンチ側から。
これ鉄則です。
ですが、
イニング中に逆転されると大変です。
急いで反対側に行かなければなりません。
延長戦ともなると、
イニングごとに行ったり来たりです。
大変ですけど選手たちの苦労に較べたらまだましです。
とにかく、
「取り逃し」がないように最善を尽くしましょう。
11-2.実写例
ここは説明の必要はないでしょう。
一つ付け加えておくことは下記です。
◆勝ったチームの応援席側から撮る。
これは下記理由によります。
①負けたチームも写せる。
校歌斉唱時には負けたチームの整列します。
勝ったチーム側から写すと、
その負けたチームも写すことができます。
②校歌のあとに走ってくる選手たちも。
そうなんですね。
校歌斉唱のあとは、
選手たちは応援席に走ってきます。
お礼の挨拶ですね。
その走ってくるシーンを写すこともできます。
後ろを振り返れば、
選手たちを迎える応援団の姿も
写すことができます。
12.勝者、敗者両方の表情も
ゲームセット後は、感動のシーンが目白押しです。
特に、勝者と敗者の両方は最低限1枚は撮っておきましょう。
12-1.実写例
12-2.明と暗の両方を
試合終了後の写真としては、
ともすれば勝ったチームだけに注目がいきますが、
ここは冷静になって撮影しましょう。
というのは、
勝ったチームも負けたチームも全力で戦いました。
その戦いに「敬意」を表するのです。
もちろん、カメラマンは一人です。
よって、撮影位置には限界があります。
だから、どの位置からでもかまいません。
とにかく、両校のシーンを残してあげてください。
それが、
全力で戦った両校への「敬意」でもあります。
12-3.表彰式のシーンも
撮影対象が決勝戦の場合は、
試合後に表彰式があります。
そのシーンも残しておきましょう。
優勝チームと順優勝チームの両方を撮ります。
撮影位置はバックネット裏となります。
ただここはネットがありますので、
ネットが写らないように、
レンズをネットに近づけてください。
場所的に「逆光」になりますが、
こればかりはどうしようもありません。
ストロボがあれば使いましょう。
(しかし、被写体が遠いのであまり効果はないでしょう)
上の写真は両校の整列シーンです。
この写真は斜め前から撮りました。
正面から撮るとレンズが広角になり、
ネットが写るからです。
とにかく球場はネットがありますので、
広角レンズは使いにくいですね。
12-4.行進のシーンも
表彰式のあとは球場内を行進しますが、
そのシーンも撮っておきましょう。
場所は内野席が良いでしょう。
しかも、
少し高い位置から撮影し、
ネットが邪魔にならないようにしましょう。
というのは、
できるだけ全員を入れたいので、広角気味で撮るからです。
(広角気味にするとネットが写ってしまいます)
12-5.胴上げのシーンも
次に大事なのは優勝校の胴上げです。
胴上げの場所は、大体が応援スタンド付近です。
◆カメラ位置が難しい。
難しいのはカメラ位置です。
カメラ位置は大きく分けて二つあります。
①勝利校の応援団席:
これは間近に撮影できるメリットがあります。
反面、背景に何も写りません。
②勝利校と反対側の応援団席:
これは遠くなりますので、
超望遠が必須です。
しかし、
背景に応援団が写りますので、
かなりの「臨場感」が出ます。
因みに、上の写真は②の位置から撮りました。
幸い、胴上げされている人(監督さん?)が、
こちらを向いてくれましたので、
表情まで写すことができました。
◆シャッターを押すタイミングは各自で。
あとは「シャッターチャンス」ですが、
これは撮影者の判断にお任せします。
基本的には胴上げされている人が、
空中高く飛んだときが、
「シャッターチャンス」です。
13.最後の観客席も
試合後も大事なシーンがあります。
応援団の退席です。
ここにもドラマがあります。
最後の最後まで気を抜かないようにしましょう。
13-1.実写例
写真は、
後片付けをする拓大紅陵の保護者です。
こういうところにも目を配りたいですね。
ちなみに、
こういうところはプロは撮りません。
新聞では誰も見向きもしないからです。
お金にならないことは彼らはしません。
だから、
私たち素人が目を向けてあげるのです。
まさに、
素人でしか撮れない1枚です。
14.まとめ
どうでしたか。
野球撮影のポイントを一気に書きましたが、
お分かりになったでしょうか。
あとは実践と経験あるのみです。
14-1.体力勝負
野球撮影に要する時間は約2時間です。
まさに緊張の2時間です。
撮り直しがきかないからです。
常にファインダーを覗いていなければなりません。
夏の大会になると、
1日に3試合のときもあります。
時間にして計7時間です。
これを真夏の炎天下のなかでするのです。
まさに体力勝負です。
私は過去に、
熱中症になったことがあります。
それも、数え切れないほど。
こうなったら、
体力勝負どころではありません。
命がけです。
14-2.事前準備(ストーリー)が勝負
事前準備(ストーリー)の大切さは前述したとおりです。
この事前準備(ストーリー)がないと最悪です。
間違いなく、取りこぼしがでます。
いい写真が撮れるかどうかは、
この事前準備(ストーリー)にかかっています。
事前準備(ストーリー)の上達も経験です。
テレビの野球ニュースなどをみて、
ストーリー作成の技を磨いておいてください。
最後に私のHPを紹介しておきます。
このHPには、
野球写真の生きた見本が満載です。
きっと役に立つと思います。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
【関連記事】
※更新履歴※
【更新】2019年9月21日、12月30日、2020年4月30日、9月12日、2021年5月30日、2022年6月21日
少しだけ校正させていただきました。
【更新】2019年9月11日
CMリンク追加。
【更新】2019年9月3日
中身(文章)をマイナー修正しました。
【更新】2019年7月13日
「目次」を追加しました。
これで少しは読みやすくなったと思います。
中身(文章)をマイナー修正しました。
【更新】2019年5月13日
中身を一部修正しました。(リンク張り追加)
※CMリンク※
ことだま 野球魂を熱くする名言集
人を育てる渡辺メモ 高校野球名将の金言
高校野球脳を鍛える 実戦プレー問題集
フォトコン別冊 スポーツ写真テクニック 2013年 10月号 [雑誌]
写真上達コーチングブック (玄光社MOOK)
まるごとわかる! 撮り方ブック スポーツ編
Canon 望遠ズームレンズ EFレンズ EF70-300mm F4-5.6 IS II USMフルサイズ対応 EF70-300IS2U
Canon デジタル一眼レフカメラ「EOS Kiss X9」ダブルズームキット (ブラック) EOSKISSX9BK-WKIT
Nikon デジタル一眼レフカメラ D5600 ダブルズームキット ブラック D5600WZBK
Nikon デジタル一眼レフカメラ D3400 ダブルズームキット ブラック D3400WZBK
球児に響く言葉力
白球の世紀 高校野球100回秘史